医療費適正化を目指す-大分県医療費適正化計画-

大分県は、別府や由布院といった温泉が非常に有名な土地です。源泉数・湧出量共に日本一となっており、正に「日本一のおんせん県おおいた」というキャッチフレーズ通りと言って良いでしょう。個人的にも良く遊びに行く地域です。

また温泉が健康に与える影響について、医学的にも盛んに論じられており、実際に温泉療法医として活動していらっしゃる方も多くおられます。そうした大分県では、今後爆発的に増えることが見込まれている後期高齢者の医療費を抑制し、医療費全体の伸びを抑えることを目標として、「大分県医療費適正化計画」が策定されました。

大分県医療費適正化計画から見る県内の医療を取り巻く現状と課題

まずこの計画は、目前に迫った超高齢社会において、国民皆保険制度を堅持し、且つ県民の健康状態の維持・向上を目的として策定されました。実際問題として、加速度的に進む極端な少子高齢化の影響で、国民皆保険制度は崩壊の危機にさらされていると言っても過言ではないでしょう。そしてこの計画は、来たる2025年問題に対する1つの回答と言えるものです。まずこの項目では、現在の大分県の医療を取り巻く現状についてご説明いたしましょう。

大分県民の医療費の動向

この計画が策定された2015年時点では、県民医療費は4,619億円となっており、年々増加の一途を辿っています。県民の平均寿命の延伸や高齢化の進展、医療の高度化がその主要因です。資料において確認されている県民医療費の将来推計では、全ての団塊の世代が75歳以上となる2025年には6,201億円、後期高齢者となる75歳以上人口がピークに達する2035年には7,799億円となっており、医療費の抑制は急務と言えます。

また大分県民の1人あたりの医療費は396,200円と非常に高額なっており、全国5位の高さです。この数値は、歯科医療における入院医療費が全国4位となっていることが大きな影響を与えています。しかし最も注目すべき数値は、入院医療費に係る1人あたりの医療費です。2015年に確認された人口の年齢構成による相違分を補正・指数化した医療費の地域差指数で、大分県は後期高齢者医療に係る費用が全国9位、市町村国保では全国3位となっており、他府県と比較して一早い超高齢社会の到来が予見される結果となりました。

生活習慣病等の状況

ご多分に洩れず、大分県民の生活習慣病有病率は増加しています。2015年度に収集されたデータによると、男性で50.8%、女性では57.5%となっており、その原因のほとんどは不適切な食生活や不健康な生活習慣の継続に起因していると言っていいでしょう。また特定健康診査の受診率や特定保健指導の実施状況に関しても、本来目標とされている数値を満しておらず、県民それぞれに対する健康寿命に関する意識づけを強化する必要がある状況と言わざるを得ません。

医療施設等の状況

2016年時点の大分県内の病院数は157ヶ所となっており、一般病院の数は132ヶ所です。人口10万人あたりの病院数では13.5ヶ所となっており、全国第4位の病院数を誇っています。全国平均の6.7ヶ所を大きく上回る結果です。

また一般診療所数においても全国平均を上回っています。大分県内には964ヶ所の診療所が存在し、内251ヶ所は有床診療所です。病床数は15,267床となっており、10年で14.4%減少しています。2025年時点での必要病床数の推計は14,649床となっており、わずかに上回っていると言って良いでしょう。

医療的観点から見る大分県内の人口と高齢化の現状

全国的な潮流と同じく、大分県においても少子高齢化は加速度的に進んでいます。特に大分県は減少傾向に入るタイミングが早く、1985年をピークに人口は減少傾向に転じました。1985年時点では125万人の人口を擁していましたが、2014年には117.4万人となっています。

65歳以上人口は2025年頃までにピークを迎え、75歳以上人口は2030年頃まで増加を続ける見込みです。また65歳以上人口の割合を表す高齢化率は、2015年時点で既に3割を超えています。現時点において、大分県の高齢化はかなり早いペースで推移していると言えるでしょう。推計では2025年に県内人口の3人に1人は高齢者となり、75歳以上人口は2割を越えることが確実です。
最後になりますが当サイトでは、健康保持に向けた大分県内の取り組みについても紹介していますので、そちらの記事もぜひご覧ください。