医療体制の充実を目指す-宮崎県地域医療再生計画-

宮崎県は古来、日向国と名付けられたほど日照時間が長く、快晴日数は全国トップクラスとも言われています。
また観光地としても大変有名で、全国的に見ても大変温暖な気候のため、マリンスポーツやキャンプなどのメッカとなっている土地です。
この記事ではそんな宮崎県にて行われている、地域医療再生計画についてご紹介いたします。

宮崎県地域医療再生計画の概要と現状分析

宮崎県地域医療再生計画は、宮崎県北部医療圏及び都城北諸県医療圏を対象として開始しました。地域医療の抱える大きな課題である、医師確保と救急医療体制の強化を柱に据え、それら諸問題の解決に向けて様々な施策・取り組みが行われています。またこれらの取り組みは、医療圏内に止まらず、宮崎県全域に対しても効果が期待できる事業が盛り込まれているのです。

これまでに行われた計画により、宮崎大学旧迷宮センターが開設され、脆弱であった救急部の体制強化が図られました。またドクターヘリの運航が開始され、県内全域への出動実績を積み重ねています。さらに医師資源確保の面においても実績を積み上げており、2011年度時点において初期臨床研修医数は29名と全国最下位であったところが、2012年度には過去最高の58名と伸び率において全国1位となりました。

医療的観点から見る宮崎県内の人口と高齢化の現状

2015年の個性調査では、県内の総人口は1,104,069人と5年で2.7%減少しています。年齢構成比では15歳未満人口は全体の13.7%、15〜64歳の生産年齢人口は56.8%、高齢者となる65歳以上人口は19.5%となっており、2010年と比較して高齢者人口が3.7%上昇しています。国立社会保障・人口問題研究所の将来推計によると、この高齢化の流れは今後も進展を続け、2020年には高齢者人口が30%を超え、2035年には35.7%に到達すると見込まれているのです。

地域医療再生計画から見えた県内の課題

また地域医療計画が初めて策定された当時以降にも、様々な課題が生じ、それらの諸問題を解決することが求められています。まず高齢化の進行による医療ニーズの変化に対応するため、適切で十分な在宅医療提供を可能にする体制づくりの支援は急務と言えるでしょう。またここ数年頻発している、地震や津波による災害に備え、災害医療対策も必要とされています。

医療資源の確保に関しては、一定の効果が認められたものの、医師や看護師の養成・資質向上に関する基盤整備はまだまだ不十分です。ドクターヘリの導入により、救急医療体制の構築は進展したものの、県内全域に対する体制強化としては不十分であり、さらなる体制強化のために救急専門医の育成を行う必要があります。またドクターヘリの運用状況に関してはまだまだ改善すべき点も多く、重複要請対策や救助を必要とする案件に適切に対応するため、防災救急ヘリとの連携を進めることが必要です。

宮崎県内で実際に行われている施策

先ほど述べた課題に対し様々な施策が行われ、諸問題の解決に向けて邁進しています。未だ十分とは言えない医師数の確保に関しては、宮崎大学医学部に「地域医療学講座」を設置することで、地域の疾病や医師の分布状況の教育・研究を通じ、地域医療の根幹を担う総合医の養成・確保が行われているのです。また医師の勤務環境改善を狙い、2次救急医療機関100床あたり1人以上の医療クラークの採用支援を行ったり、医療スタッフのスキルアップ研修を行うことで医師の負担軽減及び救急医療機能の向上を図っています。

また救急医療体制そのものの拡充を狙い、延岡市夜間急病センターの運営強化のために、他の医療圏域の医師を非常勤として確保するための人件費の支援も行われており、センターの深夜帯診療日・営業時間帯の拡大が行われています。更に医療圏域を越えて救急患者搬送が行われている県立延岡病院への搬送割合漸減を狙い、日向入郷圏域の2次救急医療の中心である・千代田病院・和田病院・済生会日向病院の勤務医を対象とした当直手当の支援も行われているのです。

更に設備投資に関する支援も随時行われています。延岡市夜間急病センターの初期救急医療体制を充実させるため、診療室や処置室の増設による医療提供体制の強化に加え、宿直室や執務室の整備、感染症患者向けの待合室の整備を行い、サービス向上のための支援が実施されています。救急医療機関の新規参入を促進するため、参入意志のある病院に対する施設・設備の整備費用や医師確保に関わる諸経費・運営費への支援を行い、新規参入のハードルを下げています。また県立延岡病院では対応できない脳血管障害患者や消化管出血患者といった、特定救急患者に対応できる輪番医療機関を対象とした施設・設備の拡充支援も行われています。