救急医療体制に力を入れる-鹿児島県地域医療再生計画-
鹿児島県といえば、魅力的で豊富な自然と奥深い歴史を感じさせる数々の名所を数多く擁する、九州の一大観光スポットです。世界自然遺産に登録された屋久島も有名ですね。また大和文化と琉球文化の交差点となった土地でもあり、他府県にはない多様な生活文化を持った稀有な地域といっても良いでしょう。この記事では、鹿児島県における地域医療再生計画を基に、鹿児島県の医療の現状やその課題についてご説明したいと思います。
鹿児島県地域医療再生計画の概要と現状分析
鹿児島県地域医療再生計画は、鹿児島市・日置市・いちき串木野市・三島村・十島村の3市2村から構成される、鹿児島医療圏をその対象地域としています。この計画で重視されるテーマは2点。医療の確保・養成と高度救急医療体制の整備です。どちらのテーマも、県内に28の有人離島を擁し、南北600kmに渡る広大な県域を持つ、鹿児島特有の地勢に起因したものと言って良いでしょう。
鹿児島医療圏には、鹿児島県唯一の救命救急センターや鹿児島大学病院があり、高度医療を提供できる医療機関が集中しています。その結果、県全域から多くの重篤な救急患者の搬送を受け入れるという、現在の状況ができあがってしまいました。特に170万人の県民を抱える鹿児島県において、救命救急センターが1ヶ所のみという現況は、高度救急医療の提供体制を整備できているとは言えません。その結果、最も医療資源が集中しているはずの鹿児島医療圏域において、救急医療体制が特段の疲弊を強いられることになりました。
医療的観点から見る鹿児島県の人口と高齢化の現状
2018年3月に公表された鹿児島県高齢者保健福祉計画によると、鹿児島県の高齢化率は年々上昇の一途を辿っており、2015年には29.4%に到達しました。この数値は全国19位の水準となっています。また後期高齢者となる75歳以上人口の比率は16.1%となっており、これは全国7位の水準です。これらのデータを鑑みるに、鹿児島県は他府県よりも高齢化の進展が早いと言わざるを得ないでしょう。また高齢単身世帯の割合も15.3%と非常に高く、全国2位の水準となっています。
将来推計では今後も人口は減少を続け、高齢化率もさらに上昇し、2025年には34.4%に達すると見込まれています。また65歳以上人口中、75歳以上の後期高齢者の割合は56%に到達し、他府県に先駆けて超高齢社会が到来します。こうした人口構成比の変化に伴い、在宅医療のさらなる進展、介護領域との連携といった取り組みが必要です。
鹿児島地域では救急医療体制の構築が課題となっている
現状喫緊の課題として挙あげられるのが、鹿児島医療圏における救急医療体制の整備です。「鹿児島県地域医療再生計画の概要と現状分析」でも述べました通り、鹿児島県の高度救急医療は崩壊の危機に晒されています。強固な救急医療体制の整備・構築は県の急務と言っても過言ではありません。
現在は二次救急医療機関で対応不可能な重篤な患者は、そのほとんどが鹿児島医療圏にあるたった1つの救急救命センターに搬送されており、圧倒的な医療資源不足に陥っています。こうした現況を打破するために、救命救急センターの複数化や三次救急医療機能の強化が必要不可欠です。また多くの二次医療圏において未整備のままにされている、夜間の医療体制の整備も必要とされています。
時間外での受信できる受け入れ態勢を整え、病院群輪番制に参加する医療機関の確保も急務です。更にこれらの体制構築に加え、周産期救急医療体制の整備も進める必要があります。そしてこれらの体制づくりに欠かすことのできない、救急搬送体制の整備も急務です。近年増加している救急医療体制における憂慮すべき問題として、搬送時の現場活動時間の長時間化が挙げられます。
この問題を解決するためには、まずは受入医療機関決定にかかる時間短縮を可能とする情報提供のシステムづくりが肝要です。救急・災害医療情報システムの活用や高規格救急自動車、ドクターヘリの導入による、迅速な搬送体制構築が求められています。
鹿児島地域で行われている具体的な施策
この問題を解決するためには、救急医療体制の整備が必要です。まず救命救急センターの機能強化・複数化、救急医療遠隔画像診断センターの設置、救急・広域災害医療情報システムの整備やドクターヘリ導入、夜間急病センターの新規設置といったバックアップ体制の拡充が進められています。また医療資源の枯渇を解決するために、医師の育成・支援に関わる体制づくりが推進されています。研修医や勤務医の研修拠点の整備や初期臨床研究環境の充実を図るための投資、医師派遣の総合窓口としての地域医療支援センターの設置が、その主な施策の内容です。