県民幸福度日本一を目指す-福岡保健医療計画-

福岡県は九州北部に位置する、九州最大の都市です。また古くから国内外における交通の要衝でもあり、福岡空港や博多港を要する福岡県は、九州の玄関口といっても良いでしょう。そうした背景があり、福岡県と言えば経済活動に関する点に注目が集まりがちです。

しかし福岡県は、経済だけでは推し量ることのできない、県民の幸福度の向上に着目した活動を行なっています。世界的に見ても稀有で、大変先進的な取り組みを推進している自治体と言えるでしょう。そして県民の幸福度向上に欠かせないが、健康状態の維持向上です。この記事では、福岡県保健医療計画を下敷きに、医療的観点から見た福岡県民や医師の現状、その医療体制について言及したいと思います。

福岡保健医療計画の基本的事項

1970年以降の国勢調査以降、福岡県の人口は増加を続けてきました。しかし近年頓に進む全国的な少子化の波に押され、福岡県も人口は減少傾向に進んでいくことが予見されています。また2025年には、全ての団塊の世代が75歳以上となり、世に言う超高齢社会が到来するのです。これほどの急速な高齢化は、世界的に見ても類を見ないものと言って良いでしょう。

それに伴う社会構造の変化は、疾病構造にも大きな変化をもたらしています。がんや糖尿病といった生活習慣病に始まり、誤嚥性肺炎や骨密度の低下に起因する骨折の多発などにより、高齢者に多い疾患への対応が求められているのです。更に平均寿命の延伸とは裏腹に、健康寿命は伸び悩み、治療や介護を必要とする方々は増加の一途を辿るばかりといって良いでしょう。

そうした社会情勢の影響は非常に大きく、産科や小児科といった診療科を選択する医師が不足し、適切な地域医療体制の構築に大きな影響を及ぼしている程です。これらの諸問題に対応するために、2014年6月に成立した「地域における医療及び介護の総合的な確保を推進するための関係法律の整備等に関する法律」に従い、各都道府県において効率的で高品質な医療提供体制の再構築急務とし、福岡県では2017年3月に「福岡県地域医療構想」を策定することになったのです。

医療的観点から見る福岡県内の人口と高齢化の現状

現在の福岡県は、総人口が5,101,556人となっており、全国第9位の人口を誇っています。年齢3区分別の推移では、燃焼人口は1955年以降減少を続けており、それに伴い生産年齢人口は2000年をピークに減少傾向に転じました。そして当たり前のことですが、老年人口は1955年以降増加の一途を辿っています。

死亡数、死亡率に関しては、高齢化の影響で増加傾向にあり、2015年度には50,000人を上回り、2016年には51,006人と過去最高の死亡率をマークしました。主要死因の第1位は悪性新生物で死亡者総数の30.4%、第2位は心疾患で11.3%、第3位は肺炎で10.1%です。長く3大死因とされてきた脳血管疾患を、肺炎が上回った形と言えます。この傾向は、間違いなく高齢化による影響によるものです。

保健医療計画から見る福岡の医師の現状

次に福岡県の医療資源に関する現状を見てみましょう。2016年時点で福岡県にて稼働している医師数は15,997人となっており、2014年と比較して337人増加しています。また県内で医療施設に従事している医師数は人口1,000人あたりに対して2.96人と、全国平均である2.38人を大きく上回っており、医療資源に関してはある程度恵まれていると言っても良いでしょう。

現状と課題

前項では医療資源に関しては恵まれていると記載いたしましたが、地域や診療科の偏在という問題があり、医療の実際の現場においては、決して潤沢な医師数を確保できているとは言えない状況です。まず根本的な問題として、医師の確保が困難となっている僻地診療所が10か所存在すること。小児科・外科・産科・産婦人科・麻酔科・救急科に関しては県全体では全国平均を上回っているものの、地域偏在が大きいことが挙げられるでしょう。

これらの問題は、2004年より導入された新しい臨床研修制度の影響が大きく、絶大な影響力を誇っていた医局の医師派遣機能の低下に起因していると言っても過言ではありません。しかし2018年度から開始される、日本専門医機構による専門医養成の仕組みが機能することで、医師の偏在解消に繋がり、ひいては専門医の質向上に繋がるものと期待されています。

今後の施策

福岡県では「福岡医療地域支援センター」を県庁内に設置し、医師に対する盤石なバックアップ体制の構築が図られているのです。まず第一に医師の確保状況を把握するために、国主導で構築が推進されている医師情報データベースを活用し、県内の医師の動向を把握・分析を推進。また「ふくおか地域医療支援サイト」を利用し、学部生への積極的な情報発信をすることで、研修医の確保が進められています。

更に「福岡県地域医療医師奨学金」を貸与した医師への補助を通じて、医師確保が困難な地域や診療科おける、医師確保を目的としたプログラムが策定されています。そして女性医師の育休後の復職を支援することで、女性医師の完全離職防止策を構築することが決定しています。それに伴い、県庁内に設置された「福岡県医療勤務環境改善支援センター」から各医療機関に強く働きかけ、勤務環境改善の取り組みを強化し、医師の離職を防ぐ活動が推進されているのです。

これらは国による「働き方改革実行計画」に基づいており、医師の過酷な労働時間の短縮策とも連動した動きと言えます。医師確保に困窮している僻地対策としては、「福岡県へき地医療支援機構」と連携し、自治医科大学卒業医師の派遣や総合診療専門医の要請支援を行うことで、僻地医療の充実が狙われています。